紅茶の零しどころ

オタクが気まぐれで書いてる

まちカドまぞく アニメ第1話を見たオタクが語りたいだけ

時、来てるぞ。

『まちカドまぞく』が遂にアニメ化してしまった。

「桃シャミの最強の関係性がとうとう映像化されて果ては世界に伝播されてしまうのか......」と考えるともう全身がブルブル震えてしまい心身ともに健康とは言えない状態で放送時間を待つなどしていましたが、無事に人の形を保ったまま記念すべき第1話を視聴し終えることができたので本作への感想や気になったことについて少し。 

 オープニング

町かどタンジェント、完全神曲で参った......。

放送前に公開されていた視聴動画と実際に放送されたOPではメロディに所々差異が見られます。

特にハッキリ異なっている部分は「ゆらゆら揺れる前髪~」からのAメロの旋律がマリンバとトランペットに変わっているところですね。

あとサビからアウトロ(間奏)への入りのドラムも変わっていますが、これはTVsizeのカットの仕様の問題なのかな。音源がどうなるのか気になるところ。

 

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縁取られ互いに隔てられた場所を歩くシャミ子と桃。

二人が魔族と魔法少女という違う枠組みの中で生きていたことを暗に表す構図が憎い。

背景の建物は桃側の方が背が高くビル群が立ち並ぶ一方、シャミ子側は建物の背が低く住宅地を思わせる。二人の生活環境の差異が背景に表れていると捉えられます。

シャミ子側に太陽があるのもミソですね。

 

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心をなくしたバフォメットさん、ノリノリ。

絵面が魑魅魍魎すぎてウケる。〇〇〇〇、もといミカン箱の上で踊るよりしろごせんぞとシンバルを叩くトリタロウがかわいいな......。

 

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13丁目と26丁目の扉絵。

ぽっきんアイスはマジで泣くのでダメなんですよね。傘の柄を二人で一緒に持っているという、さりげなくしかし強烈な関係性の描写に卒倒してしまう。

左側の花はタチアオイ(ホリホック)。花言葉は「平安」「大志」「高貴」「熱烈な恋」。

対して、右側の花は青色のアジサイ花言葉は「高慢」「辛抱強い愛情」。

どちらも梅雨を象徴する花ですが、それぞれ花言葉を並べてみるとなるほど桃とシャミ子に対応しているように思える。特にタチアオイと桃。二人の背丈とカラーの対比にもなっているから参った。

これは完全に余談ですが、アオイ(葵)という名前は葉が太陽の方向へ向かって伸びることから連想された「仰ぐ日」と書く「仰日(あうひ)」を由来としているとされます。

 

オープニング映像、既に桃シャミが強火すぎる。

 

 キャラクターの質感

映像の中に登場人物たちの生活感がめちゃくちゃに描き込まれています。

元より質感を色濃く感じさせる密な作品だったけれど、映像化によって更なるリアリティーを帯びている。

 

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 吉田家のキッチンスペース。

壁のシミや器具の劣化具合はもちろん、収納スペースがないから調理器具を壁に直にかけていたり傍に家庭ごみ分別ポスターが貼ってあったりとリアルな生活感が描かれています。

 

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千代田家のリビング。

吉田家とは対照的な広々とした空間には家具や小物のオブジェクトがほとんどなく、機能的なキッチンも使われている形跡が全然ない。

 

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極めつけはこの食事シーン。

桃の殺風景な日常風景へ視聴者を没入させます。

彼女たちの「町内」で繰り広げられるこの物語において、身近な範囲内での生活風景や所作・行動の描写による質感というものがこの作品の世界像を構築するのに重要なファクターであるので、その点で大きな信頼を寄せています。

桃の不健康描写、好きすぎる......。

 

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もう一つ。

桃が左手でダンプを止めたシーン、実は桃の左手が折れているという話。

ダンプを止めた後に桃が自分の左手を気にする描写が入っています。原作でも桃はその後シャミ子に気付かれぬように左手を自分の後ろに隠しますが、こういったさり気なくもしかしキャラクターの所作に因果関係のあるリアルな描写に質感は宿るんですね。

こういった映像的な表現が出来ることはアニメ化の大きな武器だと思います。

 

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Bパート、学校での二人の初対面シーン。

邂逅を果たした片手ダンプ事件の翌日、桃が左手首に包帯を巻いているのが見えます。描写が緻密。

 

オノマトペの演出

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こういうやつ。

擬音や枠外のセリフを文字にする演出、自分は結構好きです。

画にコミカルな感じが出て作品のテイストにもマッチしていると思います。

 

最も特徴的なのは、その擬音がSEではなくキャラクターの声で読み上げられることで「擬音ボイス」とでも言うべき演出が生まれているところでしょう。

 この擬音ボイス手法は演出効果の素材として該当の登場人物のみを用いるので、セリフ中の付加要素を最小化する効果があると考えています。

特にキャラクターとキャラクターが対面する場面において、それが「人物間の対話」であることを強調し、また内面描写を補完する役割も持ちます。

展開もリズミカルになるので、桃とシャミ子の対話によって展開されていくストーリーを考えるとこれで良いんじゃないかなと思います。

若干くどいという話も分からんでもないですけど、そこはさじ加減によるかな。

ちなみにまちカドまぞくには「作画文字監修」というクレジットがある。

 

 エンディング

よいまちカンターレ、完全神曲......。

ベースがゴリッゴリなので聴いてるだけで身体が大暴れしてしまう。

「宵待ち」とも「良い町」とも読めるcantare。

原作者である伊藤いづも先生が作詞されているという点だけで無限点のポイントをあげられてしまうんですけれど、映像の方も山川吉樹エンディングがゆるく可愛くてこれが味わい深い。

山川吉樹とまちカドまぞくの相性、めっちゃ良くないですか?

 

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ハミだせ!!15話の桃色謹製プロテイン飲料。作品への愛だなあ。

作中の様々な小ネタをありったけ拾ってくれていて嬉しい。

宇宙のめくれた部分が見えていてウケる。

 

気になったシーン

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変身バンクで映った桃の変身コンパクトの中身。色違いのヘアピンと昭和六十年の500円玉とネジが入ってる。

原作3丁目の「桃色銀行レベル1」(アニメ第2話の範囲)で桃の変身コンパクトの中にネジと500円玉が入っているのが描かれているので恐らくそのネタですね。

ただこのネジ、見てわかるように右ネジではなく逆ネジなんですよね。

桃が生活の中で逆ネジを使うような場面って何かあったっけって考えてみたけどちょっとよく分からない。

何らかのメタファーとして深読みすることもできるけど、桃が左利きなことに由来しているとかそんな感じに考えています。

 

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OPの小倉しおん。

後ろの魔法円は何を意味するのか。1カットの背景にしてはやけに描き込まれているので何らかのモチーフがあるのでは...と思ったが、僕はグリモアや魔法円については詳しくないので有識者の意見求む。魔法円の中にはプロビデンスの目、もしくはホルスの目らしきシンボルが描かれているようにも見えます。ソロモン72柱の悪魔に関係するもの?

蛇は世界的に信仰の対象であり、生と死の象徴・豊穣の象徴とされます。多くの文化の中で蛇は神聖な神と見なされますが、ユダヤキリスト教では聖書の創世記から悪魔の化身あるいは悪魔そのものとされます。それっぽいことだけ言っておこう。

魔女帽子に巻き付く姿はウロボロスを連想させないでもない。

ただこれ2巻冒頭の噓あらすじのシーンなのに小倉しおんだけ本編の普段の様子と何ら変わりないところがね。この小倉しおんがこのまま本編に出て来ても「いつもの小倉しおんだろ」としかならないのがヤバい。第1話ではまだ人畜無害な一般生徒面をしていたことにもう面白さしかない。

 

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 桃の変身エフェクトにも謎の目が。これは...? 

 

(追記:一応ネタバレ注意)

桃の変身エフェクトに紛れこむ目のシンボル、上に載せたシーン以外にも登場しています。改めて少し考えてみたのですが、やはりこれはプロビデンスの目ではないかなと。

その根拠になり得る記述が作中にあるのですが、単行本5巻で神話の時代の光の一族は「世界の矩を定義した荒ぶる全能の存在」と説明されています。また同時に「その存在は人に融け込み消え去った」とも述べられています。

魔法少女は世界の均衡を保つために光の一族(=かつての神々)に遣わされる存在であり、存在の根源が光の一族であることのシンボルとして『神の万能の目』であるプロビデンスの目が変身時に現れるのではないかと考えます。

この考えでいくと後に登場する魔法少女である陽夏木ミカンの変身時にもプロビデンスの目が浮かび上がりそう。

 

終わりに

まあ簡潔に言うとまちカドまぞく第1話、56562億点って感じです。

桃やシャミ子たちが動いている姿を見れただけで涙ちょちょ切れるという話もあるけど、作品の導入としてほぼ完璧な第1話だったんじゃないでしょうか。

 

特にアニメとして最後のアニオリパートを個人的にかなり評価しています。

原作にないストーリーを追加するのではなく、あくまで本編のストーリーを補完するための幕間として描かれていたのが良かったですね。

千代田家と吉田家、それぞれの日常生活にフィーチャーすることで、桃とシャミ子の家庭環境の対比を描きながら、今後開けていく二人の町内世界の出発地点となる基礎を第1話の中に描いておく。実は大切なことだと思います。

まだあんまりピンと来なかったって人も後生ですのでとりあえず第3話までは見てください。おそらく第3話でこの作品の方向性がハッキリと分かるお話が来ると思いますので。

というか桃とシャミ子の絡みがまだ薄いこの第1話の段階で既に桃シャミに脳をぐちゃぐちゃにされている自分なので次週以降は人の形を保てるかが気掛かりです。

これから3ヶ月、気張っていくぞ。

 

 

 

 

 

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OPの最後で人を殺すな。

「やがて君になる」スペシャルファンイベント 遠見東高校生徒総会 生徒会朗読劇 議事録

先日5月26日に開催されたアニメ「やがて君になる」のファンイベント。

無事に両公演参加して来ましたたのでその備忘録として朗読劇の内容を書き起こして、あと少しその感想なんかも。

イベントレポートにすると長くなりすぎるのでとりあえず朗読劇だけ。

 

生徒会朗読劇

あらすじ:生徒会劇の練習の為、夏休みに学校で合宿を行うこととなった生徒会の面々。初日の練習を終えた後、燈子の提案から「合宿らしい」という理由で夕飯はカレーを作ることに。食材の買い出しや調理を進めてゆく道中、それぞれの意外な一面が明らかに...?

 

 脚本は仲谷先生の新規書き下ろし。

物語は生徒会劇の合宿1日目の出来事であり、本編では詳しく描かれていなかった幕間的なストーリー。原作・アニメともに生徒会のみんなでカレーを作っているシーンはワンカットだけ描かれていましたが、「そこ掘り下げてくるか~」と意外のような納得のような。生徒会メンバーの日常の一幕を覗き見るコメディ...と見せかけてやが君らしい(精神的にエグい)シリアスシーンも。

昼公演と夜公演で分岐するシーンがいくつかありますが、物語のアウトラインに変わりはありませんでした。

 

ストーリー

ほとんどうろ覚えなのはご愛嬌で。

1.

生徒会劇合宿の一日目を終え、疲労感から空腹を覚える生徒会の面々。

燈子の計らいによって夕飯は自分たちで用意することになったが、メニューは何にするのかと問う声に「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりに燈子はカレーを提案する。

カレーと聞いて「やったー!」と大袈裟に喜ぶ堂島と侑に「カレーってそこまで嬉しいもの...?」と若干戸惑う沙弥香もあったが、槙も「合宿らしくていいじゃないんですか」と賛成の意を示し、早速食材の買い出しにスーパーへ向かうことに。

  合宿のカレーにはしゃいで子どもっぽい顔を見せる三人がかわいい。

スーパーに着いた時の侑の第一声が、あの高揚感もありつつちょっとふにゃっとした感じの「ついたー」なのが可愛くて好き。水族館デートの時のアレです。アニメのセルフオマージュ的な。

 

2.

昼公演

買い出しの担当食材......女子チーム:野菜、男子チーム:肉

女子チームと男子チームに分かれ、それぞれ分担して食材を選ぶことに。

野菜担当になった女子チーム三人が野菜コーナーを見て回る中、沙弥香は夏野菜カレーも良いのではと提案する。

「茄子に南瓜にトマト、オクラ、ピーマン...」と候補を挙げていく侑と沙弥香だったが「ピーマン」と声に出した瞬間、燈子が妙な反応をする。

侑がもう一度「ピーマン」と繰り返すと、逡巡したような短い悲鳴のような声を出す燈子。

侑「先輩、まさか...」

燈子「ううっ...」

実は燈子がピーマンを苦手としていたことが明らかに。

「そう言えば燈子のお弁当っていつも甘い玉子焼き、ウィンナー、トマト味のスパゲッティとか入ってるわよね」と沙弥香にも指摘され、その味覚の子供っぽさを侑に突っ込まれて、恥ずかし気に縮こまりながら「味の好き嫌いに大人も子ども関係ないと思うな!」と苦し紛れの抵抗を見せる燈子。

窘めるように「好き嫌いしてると大きくなれないわよ」と諭す沙弥香に「もう大きくなったよ!」と突っ込む燈子の一方、「何でも食べても大きくなれるとは限らないんですよ!!」と突然の不条理に立腹する侑。

「なんであなたが怒るのよ...」と反応に困った沙弥香が折れることで、結局定番通りのカレーにすることに決定した。 

 この三人のやり取り、めちゃくちゃ個気味良い。

ピーマンが苦手なお子様舌な燈子、お前そういうとこやぞ...。侑と燈子のピーマン問答、侑が初めて「燈子先輩」呼びしたシーンのオマージュっぽかった気もする。

というか、1年生の時からまなみども一緒に毎日机くっつけてお昼を食べている沙弥香が燈子のお弁当のおかず事情を知っているのはともかく、その味付けが甘口なところまで知っているのは「お弁当のおかず交換」というイベントが多かれ少なかれ発生していたことの証左になるのでは?めちゃくちゃ見たいな。

 

夜公演

 買い出しの担当食材......女子チーム:肉、男子チーム:野菜

お肉担当になった女子チーム三人。入れるお肉を牛、豚、鶏のどれにするか迷う侑。

「牛も美味しいけれど、鶏の方が安くカロリーも低いのでたくさん食べられるし...」と考えあぐねる侑に向かって「小糸さんって食い意地張って...」と言いかけて言葉を直す沙弥香。

焦る素振りを見せながら、実は辞めた今もソフトボール部時代の食事量が続いていることに悩んでいると口ごもる侑に対して「太ったの?」と沙弥香は遠慮なく直球をど真ん中に投げ込む。

「それでもまだ平均以下ですから!」と必死に主張する侑。

それを見た燈子は「じゃあ後でお風呂の時に確認しなきゃだね!」と何やら一人盛り上がるのだった。

 七海燈子が下心丸出しでウケた。そういうとこやぞ。

しかし実際に一糸まとわぬ姿を前にすると「合宿ってすごい...」になる女なんだが...。

 意外なところで侑の掘り下げがあって嬉しい。ソフト部時代は食トレもやってたのかな。牛か鶏かで決めかねる姿は、侑の「選択することが苦手」という側面の表れでもありますね。

 

 3.

 無事(?)に具材を揃えた各チームが合流したところで、「大事なことを決めなければならない」と切り出した燈子。

一同が集まったのはカレールー売り場。カレーの味を決定づける大事なこと、つまりカレーの辛さである。これを多数決で決めることとなった。

「せーの...」

沙「辛口」燈「甘口!」侑「中辛!」槙「辛口」堂「辛口!」

堂島「...ん?今誰か甘口って言わなかったか?小糸さん?」

侑「私は中辛って言ったよ!」

おかしいなーと訝しむ堂島の詮索を止めんとして「一斉に行ったから誰が言ったかわかんなかったよね~」と燈子が慌てて梃子を入れる。

「そんなことだろうとは思ったけど...」と呆れる沙弥香。

「辛いのが苦手な人がいるならそれに合わせよう」と侑の出した助け船に乗っかって「そ、そうだよね!じゃあ甘口で決定ということで...」と不満げな堂島をよそに強引にその場を流す燈子。

一連の流れを見た槙が「小糸さんも佐伯先輩も、七海先輩にちょっと甘いんじゃないの?」と楽しそうにからかうような口調で耳打ちすると、「な、なんのことかな~?」と口下手に侑は誤魔化すのだった。

七海燈子さん...両脇の女に手を焼かせまくりかよ。

買い出しの帰り道の侑と沙弥香、きっと燈子に聞かれないように「本当に厄介よね」「同感です」って会話をしていたんだろうなと容易に想像できてしまう。

でも堂島しか誤魔化せてないぞ!

堂島は常に一番元気なんだけど常に一番扱いが雑なところに「堂島だな」と笑ってしまう。

 

4.

昼公演

買い出しを終えて学校へ戻ってきた一同。

 買ってきた野菜を刻みながら「無心になりますよね」と会話する侑と燈子。

その横で無言になって真剣な顔つきでじゃがいもの皮を剥く沙弥香だが、その姿勢に反してじゃがいもの量は全然減っていない様子。

侑「遅くないですか...?」

燈子「もしかして沙弥香って...不器用?」

沙弥香「しょ、しょうがないじゃない!家で料理なんてほとんどしないんだから」

家ではお手伝いさんが料理をするからと弁明すると「お嬢様だ~」という反応を貰い、不服そうにする沙弥香。

「あれ、でも佐伯先輩って劇の中でお見舞いに来た時にりんごの皮を剥くシーンがありましたよね?」と思い返した侑が沙弥香の包丁捌きの不慣れっぷりを心配すると、「それは練習して劇までにはできるようになるわよ!」と沙弥香も意地を張り、じゃがいもの皮むきを手伝おうかと言っても「全部一人でやるから!」と譲らない。

燈子「侑、こうなった沙弥香はもう止められないよ...負けず嫌いだからね」

侑「それ、七海先輩にだけは言われたくないと思いますよ...」

むきになった不器用な佐伯沙弥香がただ可愛い。

劇のために難しい顔をしながら毎日りんごの皮むきの練習をする佐伯沙弥香概念、愛おしすぎないか。

 

夜公演

買ってきた玉ねぎを切ることになった一同。

玉ねぎを切ると目に沁みるからとあまり乗り気ではない沙弥香、侑、槙だったが、「こういう時こそメガネの出番、メガネでガードすれば大丈夫」と意気揚々と玉ねぎを高速で刻んでいく堂島。

こなれた手つきで捌いていく堂島の姿に感心する侑たち。

堂島曰く「料理は結構好きで家でもよく作ったりする」とか。

が、勢いよく玉ねぎを刻んでいた堂島の手が突然止まり、宙を見上げる。

堂島「あ、やっぱダメだこれ。鼻から来るわ」(涙声)

結局メガネでは防ぎきれず鼻から攻め込まれて涙ドバドバな堂島。

槙「そう言えば、玉ねぎは予めレンジで温めると辛味成分が抑えられるらしいよ」

堂島「お前...言うの遅くね...?」(涙声)

 堂島、お前料理までできたのか...。隠れハイスペックで株を上げ続ける男。どう考えてもモテないわけがない。その腕で運動部の朱里にスタミナのつくお弁当でも作ってあげてくれ。

 

5.

 鍋が煮えるのを待つ一同。

堂島「煮込み料理って待ち時間が半分以上だよなー」

侑「堂島くんって料理できたんだね」

堂島「まあねー、でも先輩たちがあんまり料理できないってのは意外だったなー。案外俺たちでも先輩らに勝てるものがあるのかもな!」

侑「だねー、じゃあ他にも特技とか趣味とかってない?」

 以降昼夜で分岐

昼公演

 槙「趣味かどうかは分からないけど、僕はサイクリングが好きでよく乗ってるかな。学校にも自転車で通ってるしね。たまに知らない街にフラッと立ち寄ったりするのが楽しいんだけど、知らない場所でも道に迷ったりはしないのは特技かもね」

堂島「良いな~!先輩たちとサイクリング、行きたいな~!そうだ小糸さん、先輩たちにサイクリングに興味がないか聞いてみてよ!」

「自分で訊けばいいじゃん」と面倒くさがりながらも「小糸さんからの方が訊き易いだろ?」と言いくるめられ、他の話題から自然にサイクリングの話題に持っていくようにと仕向けられる侑。

沙弥香「あなたたちさっきから何コソコソ話してるの?」

侑「え、えーと、二日目のカレーってなんであんなに美味しいんだろうなーって」

槙・堂島「(ずいぶん遠いところから始めたけど大丈夫か...)」

沙弥香「ああ、それ私はよく分からないのよね。二日目のカレーってドロドロしててあまり好きじゃなくて。作りたてのカレーの方が美味しいと思うけれど」

燈子「えー?溶けかけのじゃがいもとか私は好きだけどな~」

侑「ま、まあどっちもそれぞれに良いところがありますよね!例えて言うなら、そう、徒歩通学と自転車通学、みたいな?」

苦し紛れの説明をしようとする侑、「何言ってるかよくわからないわ...」と会話の意図をはかりかねる沙弥香、燈子、そして「これはダメだ」と頭を抱えた槙と堂島であった。

 

夜公演

 堂島「俺は釣りが好きだな。釣りのことなら聞かれればある程度答えられるぐらいではある」

以下昼と同様に侑が先輩組に釣りに興味がないか話題を振ることに。

侑「いやー、もうすっかり夏ですよねー。こうも暑いとプールとかで泳ぎたくなりません?」

燈子「いいね~、気持ちよさそう!ふむ、侑と泳ぎに行くということは...つまり侑の水着が見られる...?」

侑「プールも良いですけど、川や海も良いですよね!泳ぐ以外にも色々遊べますし...。水に入らなくても、釣りとかもできますよね!」

燈子「侑の水着...侑の水着...!」

侑「ね、先輩!海で釣りとか!どうですか!」

燈子「海!いいね!絶対夏休みの間に二人で泳ぎに行こうね!ふへへ...侑の水着...」

侑「もう先輩話を聞いてください~!」

完全に上の空な燈子にまたしても振り回されるに終わる侑。

 性欲を包み隠す気がない。七海燈子がフリーダムすぎる。

槙はともかく堂島も聞いてるのにそんなにぶっ飛ばして大丈夫か七海燈子。

たしかこの話の中で沙弥香が昔スイミング習ってた話にも少し触れていたんですけれど、ちょっとここら辺うろ覚えすぎて端折って書いてます。(でもアウトラインはだいたいこんな感じで間違ってないはず)

 

6.

侑「なんか無駄に疲れた気がする...」

鍋もよく煮え、もうじきご飯も炊けるかという頃、沙弥香が弾かれたように大きな声を上げる。

沙弥香「あ!!!!!」

珍しく声を荒げる沙弥香に驚く一同。

沙弥香「大事なものを買い忘れていたわ...」

侑「大事なもの...?他に何かありましたっけ?」

沙弥香「福神漬けよ!!!」

侑・燈子・堂島「......えっ?」

槙「しまった...僕としたことが福神漬けを忘れるなんて...!」

侑「えっ、槙くんそっち側なの!?」「でも福神漬けってそんなに大事ですか?別になかったらなかったでいいですけど...」

沙弥香「あ な た た ち......それ本気で言ってるの!?」(怒髪天)(握りしめた拳)(怒りに震える身体)

堂島「えー!?先輩の怒りスイッチそこなんすか!?」

カレーに福神漬けが入っていないとブチ切れてくる佐伯沙弥香概念、面白すぎて無理。

呆れるとかじゃなくて本気で怒りに震えてるのがヤバい。

さっき牛肉か鶏肉かで迷ってる後輩に「食い意地張ってる」とか言ってましたけど自分の方がよっぽどじゃありません??しかもこの女、後輩のポテトを勝手に食う。

そしてお弁当には絶対に玉子焼きを入れたい。そのこだわりは何なんだ佐伯沙弥香。

次のスピンオフの内容が「佐伯沙弥香 昼メシの流儀」だったらどうするんだよ。

まあそういうところも全部ひっくるめて、自分の価値観に誠実で正直なところが好きなんだけど。

 

侑「まあ福神漬けならコンビニにも売ってるでしょうし...。」

「はーい、一年生集合ー。買い行く人決めるよー」と渋る堂島と槙を集めてじゃんけんでお使い役を決める侑。

侑「じゃーんけーんぽん」

結果、槙と堂島はチョキを出し、パーを出した侑が一人負けする形に。

槙は若干の申し訳なさを覚えながらも、侑はお使い役を頼まれることをあっさり受け入れる。

その光景に強い恐怖を感じた燈子は「あっ......」と憂苦の声を漏らす。

侑「じゃあ、行ってきまーす」

燈子「待って、侑......」

不安の色を浮かべる燈子の声は掠れて届かない。

・・・

侑「えーっと、コンビニはっと...」

燈子「侑ー!!待って!!」

侑の後を走って追いかけてくる燈子。

侑「えっ...七海先輩!?」

燈子「待って...私も一緒に行く」

侑「いいですけど、どうしたんですか」

燈子「だって...もう暗くなってきたし、一人で出歩くのは危ないと思って」

侑「もう子どもじゃないんですから、大丈夫ですよ」

燈子「ダメ!!」

燈子は悲痛な声を上げて俯く。

 

侑「......」

燈子「ねえ、侑。手、繋いでもいい...?」

侑「え~......?部活帰りの人が通るかもしれないですし、見られたら困りませんか?」

燈子「だって、侑がどこかに行っちゃいそうで」

侑「どこにも行きませんってば」

燈子「......昔」

燈子「そうやって大切な人が出かけたまま、二度と帰ってこなかったことがあるから......」

侑「......それは」

少しの逡巡の後、踏み込む侑。

侑「お姉さん......ですか?」

俯いたまま口を噤む燈子。

侑「......仕方ないなあ。先輩、手、出してください」

燈子「侑......」

そうして燈子の声色に少しの安堵が戻った時、どちらからともなく「クゥ~ッ」というお腹の鳴る音が二人の間に響く。

侑・燈子「......あは」「あはは」「あはははは......」

一通り笑い合った二人は、次第に落ち着きを取り戻してゆく。

侑「なんだかお腹空いちゃいましたね」

燈子「ねえ侑、夕飯の予算ってあとどれくらい残ってる?」

侑「えーと、500円ぐらいは残ってると思います」

燈子「じゃあさ、それでコンビニでおやつ買っちゃわない?もちろん、みんなには内緒でね?」

侑「わるいせいとかいちょうだー」

燈子「いやいやぁ、これはお使いの正当な報酬です!」 

侑「ふふっ......二人だけの秘密、ですね」

燈子「うん!」

 

燈子「侑、大好き!」

END

 

この最後のパートまでずっとコメディだったのに、いきなり背後から鈍器でフルパワー殴打するような真似をしないで欲しい!

ささつ2のじゃんけんの下りにウンウン唸って床を這いずり回る日々を未だに送っている人間の気持ちを考えて欲しい!!

朗読劇、素晴らしかったです……。ありがとうございました。

 

この手のアニメ作品のイベントでは(ライブコーナーを除けば)どういう企画をやってくれたら一番嬉しいかと言うと、やっぱり朗読劇なんですよね。個人的にはですけど。

その本質は「リアルタイムで再構築される作品をその当事者として直接体験する」ということであって、それはイベントという媒体でしか実現され得ません。

なので朗読劇、ライブコーナーというのは参加者にとって最も希少価値の高い体験だと思っています。

それを原作者である仲谷先生が脚本を新規に書き下ろしてくださったとなれば、もう本当にこの上なく有意義だった。

欲を言えばあの朗読劇の複製台本が欲しすぎる。良い値で買わさせてくれ...。

 

 

 

 

 

これは余談ですが、劇といえば夜公演の「やがて○○の話になる」コーナーで高田憂希ちゃんと寿美菜子さんが突然本編を再現する即興劇を始めた時は本当にヤバかったですね。「ヤバイ」と大声で叫びそうになる心を押し留めるのに大変な苦労をしましたが、自分の右の方からは「ヒュッ」っと見知らぬオタクの息が止まる音が聞こえてきたのも面白かったです。

あとhectopascalの話もしたい...。また別で書くか。

舞台『やがて君になる』感想 ~リアルな質感と新たな解~

私の愛してやまない作品『やがて君になる』がまさかの舞台化。

その千穐楽公演を観劇して来ましたので、感想や諸々の所感なんかを綴ろうと思います。

公演自体は既に終了しましたのでネタバレ配慮等はしないつもりですが、まだ観劇されておらず円盤で鑑賞予定の方などは予めご了承ください。

 

舞台版の脚本について

端的に言って、かなり良くできた脚本だったと思います。感激でしたね。

この舞台の中だけで〝侑と燈子の物語〝が完結できる作りになっていて、「よくあの内容を2時間に収めることができたな...」と素直に感心させられました。

 

 それも公演の尺に合わせてシナリオを大幅に変更させるなどのオリジナル要素で対応したのではなく、元の形を極力壊さずに可能な限りリアルな形で舞台上に出力できていた点が特に良かったと感じています。特に重要なシーンやセリフを上手く取捨選択し、要点をかいつまんだシンプルな構成になっていたので、初見の方にも分かり易かったのではないでしょうか。

「要点をかいつまむ」と言っても、ただ重要なシーンを切り抜いて順序通り配列するだけではなく、統合して繋げられる場面展開を発見し、話の整合性を持たせたままシナリオをショートカットさせた手法がとても印象的でした。作品の一ファンとしても「お~、こことここは繋げられるのか~」という新たな発見になったので、その構成の巧みさに観劇しながら唸らされました。

 ただ、このショートカット手法にはひとつデメリットがあり、それは「『やがて君になる』特有の〝間〝の表現」が失われてしまうことです。何より場面転換が多くなってしまいどうしても駆け足にならざるを得ません。

やがて君になる』の魅力の一つとして、会話における息づかいの間 や 情景描写の連続的展開が織りなす「透明度の高い空気感」というものが存在すると考えているのですが、舞台というメディアの特性上それを表現し切ることは難しいでしょう。要は限られた条件の中で「何を取るか」ということなのだと思います。

エンドマークのある達成された作品として舞台にするためには、ここを諦めて方向転換するしかなかったと思いますし、こればかりは仕方がないかな~と自分は割り切ることにしています。それを差し引いてもなお素晴らしい舞台だったので。

 

 そして最もの功績は「生徒会劇」を特に丁寧に作り込んでくださっていたことでしょう。本作は生徒会劇をフィーチャーすることによって劇中劇による二重構造を取ったものとなり、観劇する者にある種の高い演出効果を生んでいたと考えます。

本作において私たち観客は、「作品世界(フィクション)を補強するための劇中劇(フィクション)」という構造の中で「劇中劇(フィクション)の中に観客(ノンフィクション)が巻き込まれる」という体験をすることになります。舞台において劇中劇はメタフィクション的な手法として主に用いられ、劇中劇への導入のために劇が行われるという主従関係を見せますが、本作ではあくまで劇のために劇中劇があるのであり『やがて君になる』の世界や登場人物が第四の壁を壊すことはありません。

上手く言語化できなくて申し訳ないのですが、これによって「フィクションの中のフィクションである生徒会劇にノンフィクションである観客が巻き込まれた時、そこから帰ってきた観客は生徒会劇の上位に存在するフィクション(つまりやが君の世界)へと帰ってくるので、フィクションである舞台とノンフィクションの境界が曖昧になる」という現象が生じると思うわけです。多くの人が観劇を通して「やが君は現実だった」と感じたのはキャストの再現度の高さ以外にもこういった要素があったのではないかと考えています。

これを考えると舞台という媒体はとても効果的だったというか、作品と見事にシンクロしていたと思いますね。アニメでは生徒会劇までストーリーが進んでいなかったので、原作以外の媒体でこの劇を見られたことも「念願が叶った」という感じで。その上で準主役キャラたちを掘り下げるシーンもしっかり入っていたりして、脚本の随所に『やがて君になる』への愛とリスペクトが感じ取れて非常に嬉しかったです。

 

 また、唯一原作から大きく分岐する生徒会劇後の侑と燈子のラストシーンですが、原作のかの有名な「零れる」のレイニー止め展開とは打って変わり、舞台版では燈子が侑の気持ちに正面から向き合います。観劇された皆さんはこの結末をどう感じましたか?

自分は「新たな分岐ルートの生起」として舞台の結末を納得することができました。それも小糸侑の分岐ではなく、七海燈子の分岐ルートとしてです。七海燈子の抱える問題の何をフィーチャーするかでここが分岐するのだと思われます。

原作では生徒会劇によって燈子の同一性拡散は治まりましたが、もう一つの問題である「束縛する呪いの言葉『好き』」が積み残されていたために侑との間にすれ違いが生じてしまいます。

一方で、舞台版では燈子が「好き」という言葉に囚われていることが一度も説明されていませんでした。「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」に当たるシーンでも「言葉で閉じ込めて」の燈子の独白シーンはカットされています。(正直うろ覚え、間違ってたらこっそり教えて)

原作・アニメと舞台版における七海燈子の大きな違いは、この「好き」に対する怨嗟の有無と考えられます。

恐らく舞台版の燈子は「好き」という言葉に縛られていないため、侑の告白に正面から向き合うことができたのでしょう。この結末から逆算して、燈子の問題が一つ無効化されたことで「言葉で閉じ込めて」は意図的にカットされたのだと思われます。よって、燈子から侑に向けられた「私を好きにならないで」という言葉も、燈子の変化による自己同一性の達成で解決できる問題となり、物語は収束します。そして侑に救われた燈子は、それまで侑に貰った分を今度は返す番となって、「侑のおかげで変われた、侑も変わることを怖がらないで」と手を差し伸べるのです。泣いた。小糸侑のモンペなので。

例えるならば、マルチエンディング作品『やがて君になる』のトゥルーエンドが原作で、ノーマルエンドは舞台版...みたいな。どちらにしても、上述の通り舞台版は舞台版で話の筋が通っているので「これはこれでアリなんだな」と納得させられた次第です。

ノーマルエンドと喩えた通り、沙弥香の物語や「好き」の言葉の再定義が行われない舞台版では、本来の『やがて君になる』が描くテーマの全ては達成できないでしょう。しかし、「こういう描き方もできる」ということをこの舞台を通して新たに理解することができたと思います。そして何よりも、侑も燈子も二人とも幸せなんですよ。それは「特別」で、何ものにも代えがたいことなんですよね。(オタク)

 

 脚本で残念だった、というか無念だったところがあるとすれば、それは佐伯沙弥香に関するストーリーについてですね。尺の兼ね合いと先述した舞台版七海燈子の特性上、沙弥香の一番の正念場となるお話が構成に入らなかったために、あの舞台だけでは沙弥香を十分に語れなかったこと、報われないままで終わったことはやはり少し寂しい。いや、めちゃくちゃ寂しい。佐伯沙弥香...。

いつかのアフタートークで、その点についてはキャストも制作陣も歯がゆい思いをしているとのお話をしていたと目にして「そうだよなぁ...」と思いつつ、佐伯沙弥香を中心とした番外編が舞台化されることをほんの少しだけ夢に見て待っています。

 

キャストとキャラクターについて

 みんなめちゃくちゃクオリティが高くてたまげました。

ビジュアルも演技も「コスプレ感」というものがなく、本当にそういう人物が生きているように見えたんですよね。やが君は現実。

 

 小糸侑/河内美里さん

めっちゃ可愛い~。小糸侑の小動物っぽい可愛さを最高に表現されていたと思います。

原作の侑はクールでクレバーな女の子というイメージがありますが、舞台版の侑は比較的活発で明るい女の子であるように見えました。しかし舞台版もその活発さの裏には原作のような物憂げな表情を隠しています。

登場人物の中では特に原作との表面的な違いの大きい子でしたが、脚本の項でも述べたように舞台の進行の関係の上で圧倒的にセリフの多い侑はどうしてもスピーディに動いていかなければならないので、 それに適合した形で舞台版の侑が形成されたのかなと思います。

舞台版の侑は感情表現が結構豊かなので「この侑はソフトで負けたら泣いたりしそうだな~」とか思ったり。それでも小糸侑としての違和感を感じなかったのは、河内さんが侑の本質をしっかりと咀嚼されていたからなのでしょうね。仮面の下に隠したモヤモヤした感情の表現も、燈子に対して感情を強く出す場面も演技にリアルで切迫したものがあって、非常に質感のある一人の女の子の姿がそこにはあったんですよね。感情が強く出るシーンでの行き場のないような手の動きは必見です。

僕は特に生徒会劇のナース衣装の侑がありえんほど可愛くて好き。

 

七海燈子/小泉萌香さん

 演技の迫力がヤバすぎる。顔も良すぎる。とにかく凄い。

「七海燈子のブラックボックス感をここまでリアルに表現できる人間いるかよ...」と圧倒されましたね。本当に七海燈子だった。

燈子の黒い部分の表現はもちろん、侑に甘えたい妹な甘々な表情も心の弱い部分も完璧超人な雰囲気づくりもどれも本物で、「たぶんこの人より自然に七海燈子を見せることができる人はいないんじゃないかな」と思わさせられるほどでした。そしてそれぞれの表情のスイッチの切り替えがまた凄い。時にかっこよく、時に美しく、時に可愛く。「極めて困難」と思われた七海燈子役を見事に表現してみせた小泉萌香さん、流石すぎて頭が上がらない。一つ一つの所作に凄みがある。大場なな役は伊達じゃねぇ。僕の負けです。全オタクは小泉萌香さんに落ちた方がいいです。ビジュアルも完璧なんだよな。

 

 佐伯沙弥香/礒部花凜さん

ビジュアルの再現度が高すぎる。でもちょっと背が低いところが可愛い。

ちなみに調べてみたら礒部花凜と河内美里さんは身長が二人とも157cmで同じらしいですよ。侑と沙弥生が舞台上で並ぶ度に「目線の高さが一緒だ...」と深く唸っていました。これは侑沙では?

お嬢様らしいおしとやかな声の調子の演技は流石声優というか、「礒部花凜ってこんな演技もできるんだな~」と感心させられました。声質はとても相性がよかった。しかし逆に声質のお嬢様感が強いことで、ところどころもう少しダークな表情を見せてくれても良かったかなとも思いました。佐伯沙弥香の美は凄く表現されていたと思います。

そして僕が一番感銘を受けたところは以下のツイートに書いた通りです。

 本当にありがとう。佐伯沙弥香のオタクより。

 

 主役三人の他にも堂島もこよみも朱里もみやりこみんなリアルな質感を持っていて「これホンモノでは?」と思わせられたのですが、特に僕のツボだったのが槙聖司役の石渡真修さんですね。

舞台の槙聖司は自分が興味がないことや理解を示さないことへの素っ気なさがやけにストレートだったり、ここぞというシーンでのダークな一面が非常に印象に残っています。

特に、侑と槙の「人を好きにならないことは寂しくないか」という会話の中の「ないね。僕は楽しいよ。こういう距離からみんなを眺めるの」というセリフは舞台から客席に一番近い場所で観客に面と向かって言われるのですが、これが個人的にとても印象に残っています。『やがて君になる』の観客として自分が槙聖司でいるような気持ちで座席に座っていたのに、当の槙聖司に突然こちらのことまで見透かされたよう気持ちになってめちゃくちゃゾクッとしたんですよね。今まで恋の傍観者として自分と槙聖司は同じなんだと思っていましたが、この体験でまた槙聖司の本質に何か触れたような気がしています。これは舞台ならではでした。

 

終わりに

 舞台『やがて君になる』、総評として本当に素晴らしかったです。

新たなストーリー構成に、質感を持ったキャラクターたち。新たな発見と感動、そして愛が詰まった素敵な舞台だったとそう言えます。終演後に全身で感じた心地良い疲労感や達成感がその証です。

脚本もキャストも本当に良かったですし演出面でも優れていました。オープニングで「君にふれて」が使用されたのも嬉しかったですし、曲がかかるまでのシーンの流れが天才的でめちゃくちゃ鳥肌立ちましたもんね。

星をプラネタリウムのように舞台に映し出したり、やが君における「光」という重要な要素の表現のためのスポットライトなどの演出効果もよく考えられていました。

衣装や小道具も忠実に再現されていたのも嬉しかったですし、キャラクターと世界観の質感を高める役割を果たしていたと思います。

というか侑と燈子のイチャイチャを現実のものにしてくれたというだけで金払う価値あるんですよ。マジで。一生見ていたかった。

舞台化して本当に良かったと心から感じています。

 

惜しむらくは自分が千穐楽しか参加できなかったことなんですよね...。無理してでももっと観に行くべきだったと気づいた時にはもう後が無かった...。

DVD・BDが発売されたらまたじっくり見るぞ~。

やがて君になるは全メディアで神!最高!

 

 

 

 

これは余談ですが、ゲネプロ含め舞台で全90回侑と燈子は本当にキスしていたと聞いて「そこまで繊細に描いてくれるなんて...」と思うと同時に「プロとは言え最初の一回は流石に両者の間に照れがあったんだろうな...めっちゃ気になる...」ということを悶々と考えては頭を抱える日々を送っています。キスシーン、映像で穴が空くほど観察したいね...。