紅茶の零しどころ

オタクが気まぐれで書いてる

桃山みらいは春音あいらの夢を見るか

第2クール目を迎えて更なる盛り上がりを見せていくキラッと☆プリチャン。最新話ではミラクルキラッツが青葉りんかを迎えた3人での初のチームライブを行い、最高の新曲を引っ提げて堂々の新しいスタートを切った。

プリティーシリーズの最新作として世に出た今作だが、第1クールの終わり、一つのターニングポイントである第13話にて、シリーズ第1作目にあたる「プリティーリズム・オーロラドリーム」の主人公「あいら」が衝撃の登場を果たした。その衝撃は数多のシリーズファンに伝播したのだが、あまりにも突然の登場だったために「何故今ここであいら?」と疑問に思われた方も多いであろう。自分もそれについて考えていたのだが、アニメイトタイムズに記載された池畠監督のインタビュー記事から「プリチャン」と「あいら」の関係について見えてきたことがあるので、今回はそれについて少々考察のようなものを記していきたい。

 

主人公は「普通の女の子」

まずはこちらの池畠監督のインタビュー記事を読んでいただきたい。

『キラッとプリ☆チャン』監督といっしょにアニメ第1クールを振り返ってみた!/インタビュー | アニメイトタイムズ

 

記事の中でプリチャンのコンセプトについて以下のように書かれている。

池畠: 今回は企画のコンセプトの段階で「『プリパラ』の時のような突き抜けた感じは抑え目にして、地に足がついた話にしてほしい」と言われました。

池畠: 主人公を普通の女の子にしておけば、話は変な方向には行き過ぎない。そう考えてみらいのキャラクターは配置しています。ちょっと影が薄いとか言われてますけど(笑)。

リアル指向で現実寄り、それがプリチャンの基本的なコンセプトであると言及されている。そして地に足が着いたストーリーの基礎として主人公に桃山みらいというごく普通の女の子が据えられている。

本作のキーワードとなっている「やってみなくちゃわからない、わからなかったらやってみよう」というセリフは、普通の女の子が日常から非日常へと飛び出すための合言葉であり、本作のテーマはここにあると見受けられる。

 

春音あいらとは

プリティーリズム・オーロラドリームにて主人公を務めた春音あいら。

彼女は当初プリズムショーの「プ」の字も知らないような女の子で、そんな世界とは無縁のごく普通の中学校生活を送っていた。ある日、母親譲りの優れたファッションセンス(服の声が聞こえる)を滝川純に見出され、プリティートップのプリズムスタァとしてデビュー。第1話にてぶっつけ本番の初体験にも関わらずプリズムジャンプを飛んでみせるが、実際は運動神経がかなり悪く、何も無いところでもすっ転ぶのが日常。プリズムショーの世界へ巻き込まれる形で参入していく中で、りずむやみおん、Callingsやライバルに出会い、人として、プリズムスタァとして成長していく。性格はやや内向的だが前向きで芯が強く、困難な状況においてこそ彼女の真価は発揮される。

ディアマイフューチャーではプリズムスタァたちの憧れの先輩として登場し、色々あってショウとのわだかまりを解消した後にデザイナーを目指して海外へ飛び立った。

世界へ影響を与えた春音あいらの物語は「プリズムショーを全く知らなかった普通の女の子がその頂点を掴んでみせたことで、日本中の女の子の憧れとなり、世の中の多くの人々に夢を与えた」ことに集約される。詳しくは第50話「新プリズムクイーン誕生!」まで見ていただければ涙が溢れ出て止まらなくなるほどに分かる。

オーロラドリームのキャッチコピーは「なりたい自分にプリズムジャンプ!」。

 

プリティーシリーズのスターシステム

再び上記のインタビュー記事から引用する。

――あとは“デザイナーズセブン”として『プリティーリズム・オーロラドリーム』のあいららしきキャラクターが登場しましたが、経緯について教えていただけますか。

池畠: あいらが出てくることは当初から決まっていて、今回は顔見せだけですがいずれ……とだけ言っておきます。

依田:『アイドルタイムプリパラ』で登場したみあと同様、同一人物ということではなくスターシステムだとお考えください。

プリチャンに登場した「あいら」は「春音あいら」とはプリズム因子で繋がるパラレルワールドの別人であると明言されている。

実例として、プリパラにセインツが登場し、アイドルタイムプリパラに華園みあが登場したように、プリティーシリーズでは過去作のキャラクターがスターシステムで用いる試みがなされている。

しかし、プリティーシリーズにおけるスターシステムは単なる長年のシリーズファンへのサービスであるだけでなく、その存在がストーリー上で確かに意味を持ち、重要な役割を果たすよう狙って登場させているのだ。

アイドルタイムプリパラにおいて、みあは妹のしゅうかとその友達のガァララが仲直りをする背中を押したが、それはディアマイフューチャーにおいて友だちと時に笑い合い時に喧嘩して夢に向かって真っ直ぐに走り続けたみあだからこそ果たせた役割であり、アイドルタイムのテーマである「夢」にも相応しく合致した存在であると言える。華園みあも歌唱した「Dear My Future 〜未来の自分へ〜」が如何にアイドルタイムのストーリーと調和するかを考えれば、みあがアイドルタイムに登場したことも深く頷ける。

また、アイドルタイムではセインツのメンバーであるあいらとなるの現在について華園みあの口から語られており、プリパラ世界におけるあいらは世界的に著名なデザイナーになっているようだ。

そしてプリチャンにおいて、「あいら」が登場することが当初から決まっていたと言及されているからには、華園みあ同様、「あいら」の存在もまたストーリー上で重要な役割を持っているであろうことが伺える。

 

桃山みらいと春音あいら

ここまで踏まえた上で、桃山みらいのパーソナリティーを考えてみる。

好奇心旺盛なわりに引っ込み思案なところがあるが、基本は前向きで明るい性格。
人が普段は気づかない“キラッときらめく良い所”を見つけるのが得意。

キャラクター キラッとプリ☆チャン|テレビ東京アニメ公式 プリチャン やってみた!

どこにでもいる普通の中学生だった桃山みらいが幼なじみの萌黄えもに引っ張られる形で始めたプリチャン。やや引っ込み思案で、えもとは対照的に運動神経も良い方ではなく、自分から積極的に行動するタイプではないが、第1話ではいざライブを始めようという土壇場で怖気付いてしまったえもの緊張を解し、共にデビューする決意を見せたような芯の強さも持ち合わせている。

 

見えてきただろうか、デジャヴとでも言えよう桃山みらいと春音あいらの共通点が。桃山みらいのキャラクター性・ストーリーは春音あいらのそれと共通する部分が非常に多いのである。プリチャンに「あいら」が登場した理由の核がここにあると考えられるのではないか。

つまるところ、プリチャンにおける「あいら」は桃山みらいにとっての先達なのだ。そしてこの先の展開の中でみらいが、延いてはミラクルキラッツが壁にぶつかった時、先達である「あいら」がその壁を超える一助となるか、はたまた「あいら」の存在がみらいにとっての道しるべとなるか、それは未だわからないところではあるが、「あいら」の存在は今後のストーリーにおいて非常に重要な存在となるだろう。10周年へと向かうプリティーシリーズからの往年のファンへのサービスであるとともに、シリーズの一つの原点回帰であり、今と過去を結ぶ大きな意味があるのだ。

 

しかし、そんなみらいとあいらの間で大きく異なる点が一つある。

それは春音あいらがステージに立ちながらも「自分がプリズムショーのステージに立つ理由」を探しながら歩んできたのに対して、桃山みらいは最初から「自分の意思で望んでプリチャンの世界に飛び込んだ」ことである。プリチャンを始めるきっかけこそはえもだったが、怖気付いたえもの手を引いたの紛れもなくみらいだった。これが2人を大きく分ける要素である。これがストーリーにどう作用していくか、それもまた視聴の楽しみの一つだ。

 

プリチャンのこれから

「やってみなくちゃわからない、わからなかったらやってみよう」。

プリチャンには「好奇心を出して新しい挑戦へ一歩踏み出そう」という視聴者へのメッセージが込められている。リアリティを持った視聴者に寄り添う形で、新しい自分へと一歩ずつステップアップして自分の世界を広げていく女の子たちの姿がこれからも本作で描かれていくことであろう。

そのトライアンドエラーのストーリーの中で桃山みらいの未来はどのように描かれていくのか。果たしてみらいは「なりたい自分」、もとい「自分が本当にやりたいこと」を見つけ出すことができるのか。

プリチャン第1話のラスト、初めてプリチャンでライブをしたみらいが自室で眠りにつこうとするシーンに、みらいの口からこんな言葉が漏れる。

「どんな私を見てもらおうかな」

 

結局、このエントリーで自分が言いたかったことはこの一言に詰まっているのだろう。

これからも桃山みらいの成長を楽しみながら、視野を広く持ち、プリチャンを大いに楽しんで視聴していきたいと思う。

 

 

 

つまり桃山みらいちゃん、愛してるよ…………。

 

追記:

書き忘れていたが、桃山家も春音家もともにケーキショップを経営しているという点でも二人は共通している。

やはり意図的なものがあるのだろうか。